頂き物  「めにはめを〜おまけ〜」 (興明日)

「そういえば、興さんがああいう授業に出るのって、珍しいですよね」


率直な感想だったのだが、言ってからさすがに(まずかったかな…)と思う。
聞きようによっては失礼な明日叶の言葉に、興さんが小さく首をかしげる。
恐る恐る顔色を伺うが、その表情に、気分を害した気配は全く見えない。
「そうか?…ん、そうかも」
不快がるどころか、嬉しそうに目元を和らげると頷いた。
「あすかが、いるから。おれ、なるべくあすかといっしょにいたい。ずっと」
だから。 にこにことそう言ったかと思うと、今度は急に、不機嫌そうに顔をしかめた。
興さんにしては珍しく、ころころと表情が変わる。
「できたら、おれが、あすかとくみたかった。でも、おれじゃぜったい、あすかに痛いことなんて、できない」
むむむ、と難しい顔のまま唇を尖らせる。 なるほど、それでは練習にならない。
恋人に対する甘やかな愛情を臆面無く晒す興さんに、明日叶は頬を染めてはにかんだ。
「俺なら平気なのに。興さんみたいな達人に教えてもらえたら、すごく勉強になる。
あ、でも今の俺の実力じゃ、興さんの足を引っ張っちゃいますね……」
「いや」
興さんが真剣な面持ちで首を振る。
「あすか、ずいぶんじょうたつした。おれのあし、ひっぱらない。
そうじゃなくて、おれ、れんしゅーになると、てかげん、うまくできない」
そ、と包帯を巻いた手に触れられる。
「けが、させたくない。くやしいけど、ふじがや、じょうず。おれより、あすかのあいて、てきにん」
少しだけ悲しそうに苦笑する興さんに、明日叶は思わず意気込んで言った。
「じゃあ俺、もっと練習しますから!もっと上手く受け身取れるようになったら、
そしたら、組んでもらえますか?…もし、興さんの迷惑じゃなかったら!」
その勢いに驚いたように目をぱちぱちさせると、一瞬考え込んで、それから頷く。
「わかった。じゃあ、あすかがもうすこし、じょうたつしたら」
「本当ですか?」
「ん。やくそく」
ぴこんと片手の小指を立てて興さんが笑った。
それに指を絡めて、明日叶も肩を竦めて笑んだ。


―――と。
「わっ」
とん、と腕の付け根を突かれた。
指先だけのごく軽い力だったが、不意をつかれたのと、上手くツボのような場所を押されたせいか、
身体はいとも簡単にベッドに倒れ込んだ。
「は、興さん?」
穏やかだった興さんの微笑みが、徐々に違う種類の表情にシフトしていくのが、はっきりと分かってしまう。
少しずつ熱量が上がるその視線に見つめられ、
まだ触れられてもいないのに、明日叶自身の体温までがちりちりと炙られていく。
―――こういう時の彼に、いかに抵抗が無駄であるかを身に染みて知っている明日叶は、
この後に待ち受けるだろう事態に思いを巡らせ、思わず喉を鳴らした。


「あすか、やっぱりこのままでも、いい」
熱を孕んだ楽しげな声が、影と一緒に覆いかぶさってくる。
横に投げだした左手に、跪くようにして口付けを落とすと、興さんがにっこりと笑った。
「おれのまえでは、うけみ、とれなくていい。そしたらあすか、にげられない」
さらりと怖いセリフを口にする。 その唇が、蕩けるほど甘く自分を翻弄するのを知っているから。
明日叶は小さく笑うと、観念して、そっと目を閉じた。


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フギャーーーーーーーー!!!!(3回目)
あかんあかんあかん。死ぬ死ぬキュン死する。
雪織様、的確に私の悶えポイントを把握してらっしゃる。
あの顔立ちで、あの言動で、強いんですよはじめちゃんは!
ほっそりして見えて、ガタイいいんですよはじめちゃんは!
そして、良くも悪くも自分に素直。
なんかもう、ポイント書いてるだけで悶えてきました(病気)。


雪織様、更なる続編も超期待してます☆